東大寺所有の文化財写真をご提供いただくにあたり、宗教的な文化財写真利用の際に、所有者である社寺が、ぜひ御理解いただきたいと考えている利用方法についての意見をいただきました。
文化財所有者、著作権者、利用者が円満な状態で、文化財写真を円滑に利用できる環境を実現するために、そのご意見をまとめ、掲載いたします。文化財写真御利用の際に、ぜひ参考としてください。
これまで数百年から千年を超える時間を経て、多くの文化財は今日に伝わっております。その経緯は日本の歴史そのものといっても過言ではないでしょう。
そのような文化財を次世代に伝え、広く教育してゆくことは、日本にとって大変重要なことです。しかしながら、そのような文化財を単なる美術品、
貴重な芸術としての側面でのみ捉えて利用することで、その文化財を長い年月、守ってきた者の信条、精神を傷つけることがあることに留意していただきたいと思います。
たとえば仏像は、その身体、仕草や装飾品、一つ一つに意味を持っており、利用上の問題から、勝手にはぶいたり、変形したりすることは、そこの宗教性を見出す者にとって、
耐えがたい精神的な苦痛を与える、ということです。文化財に精神性を見出している者の、絶え間ない努力によって、文化財は今日に伝えられている、
という現実をお受けとめいただき、利用にあたって、少しの配慮があればそのような状況は避けられる、ということをご理解いただくことが重要だと思っております。
このように利用形態が問題となる場合、その原因のほとんどは、明確な意図や故意、ましてや悪意などではなく、コミュニケーションの不足である、というのが現実ではないでしょうか。
ここで、そのような行き違いを避けるためにも、利用上のご注意を明記しておきたいと思います。
(仏像などのお写真について)
仏像は本尊とされる場合が多いなど、宗教における中心的な存在です。それは仏像に対して、日々儀式を行うことなどからも、
御理解いただけることかと思います。そのような仏像の扱いは特にいろいろご配慮いただきたい部分です。秘仏として、
通常拝観できない仏像もあるなか、写真利用に共すること自体、繊細な問題であることを御理解ください。
・切り抜き
仏像の写真を切り抜く際に、光背、持ち物など付属の部位を分離しないで下さい。これは光背など付属の部位自体に意味がありますので、
安易に分離、切削除などを行わない、ということです。
・分離
三尊像や立体的に曼荼羅を表現するなど、仏像は組み合わせて配置することで意味を持つ場合があります。そのため、複数で映っている仏像を、
それぞれを分離することも問題があります。ただ、通常は仏像一躯ずつ、撮影された写真もある場合が多いので、あらかじめ、個別に撮影された写真を御利用下さい。
・トリミング
前述したように、仏像は細部まで含めた全体で、宗教的な象徴となっております。基本的に、全身で映っている写真を部位で利用するようなトリミングをしないで下さい。
やむを得ずトリミングする場合は、そのトリミングが宗教的に許されるのか、所有者にお問い合わせいただくことが大切です。全身で撮影されている写真を、
首から上だけにトリミングすることなどは、宗教的に絶対あってはならないことなのです。
(宗教的な建造物・五重塔など)
寺院建築は単なる建築というだけではなく、宗教的に特別な意味を持つ場合が多々あります。例えば、今回提供される写真には含まれておりませんが、
五重塔などは、仏舎利をおさめた建造物であり、宗教上、強く崇拝の対象となっているものです。このような建築物に文字やイラストを重ねないでください。
ただ、どの建築物がどのような意味を持っているのかについては、解釈が難しい場合が多いことも事実です。このため、基本的に宗教的な建築物の上には、
文字やイラストを載せないことが最善です。
以上 2009.11(文責・JPCA)